ジョヴァンニ・サルトーリ、ウィキから

ジョヴァンニ・サルトーリ

 

ジョヴァンニ・サルトーリ(Giovanni Sartori, 1924年5月13日 - )は、イタリア政治学者。専門は比較政治学政党システムの研究で知られる。

フィレンツェ生まれ。フィレンツェ大学で博士号取得。1979年からコロンビア大学で教鞭をとり、現在コロンビア大学名誉教授。

サルトーリによる政党制類型

サルトーリは政党制を政党間競合のある「競合的政党制」と競合のない「非競合的政党制」の2つに分類し、これをさらに数とイデオロギー的距離によって分け、以下の7つに分類した。

著書

著書

  • Democratic Theory, (Wayne State University Press, 1962).
  • Parties and Party Systems: A Framework for Analysis, (Cambridge University Press, 1976).

現代政党学 - 政党システム論の分析枠組み (普及版)

  • Comparative Constitutional Engineering: An Inquiry into Structures, Incentives and Outcomes, (Macmillan, 1994, 2nd ed., 1997).(工藤裕子訳『比較政治学――構造・動機・結果』早稲田大学出版部, 2000年)

比較政治学 - 構造・動機・結果

 

サルトーリの政党制類型

1970年代にジョヴァンニ・サルトーリが政党の数とイデオロギー的距離の2つを基準にした政党制類型を提唱し、政治学者に広く受け入れられた。サルトーリはまず政党制を競合的なものと非競合的なものに分け、競合的な政党制は数とイデオロギー的距離によって分割した。

サルトーリの分割法は、うまく機能する民主主義として二大政党制穏健な多党制を取り出した。二大政党制に入れられたのは、イギリス系のアングロサクソン諸国である。穏健な多党制に入れられたのは、ドイツの他、ベネルクス三国やスカンディナヴィア三国などがある。これらの政党制は、イデオロギーの差異が小さいことが共通の特徴である。

またサルトーリは、民主主義ではあるが、政治的には非効率なものとして一党優位制分極的多党制を指摘した。典型的な一党優位制としては、55年体制日本、(ジャワハルラール・ネルーインディラ・ガンディー下の)インドがある。分極的多党制に入れられたのは、サルトーリの母国イタリアの他には、ヴァイマル共和政フランス第三共和政フランス第四共和政などが上げられる。これらの政党制は、イデオロギーの差異が大きいことが共通の特徴である。

サルトーリの念頭にあったのは、デュベルジェに対する批判ではなく、その拡張である。デュベルジェは二党制をもって、もっとも効率的な民主主義であるという結論を出していたが、サルトーリはそれに付け加えて、穏健な多党制も効率的な民主主義であると結論づけた。しかしながら、サルトーリも結論から先に入って理論を組み立てた観があり、1970年代のスウェーデンはどう見ても社会民主労働党による一党優位制であるべき[1]だが、穏健な多党制に分類されているし、ベルギーも分極的多党制であるところを穏健な多党制としている。サルトーリがもっとも重視したのは、イデオロギーの差異だからである[2]。しかしながらイデオロギーを差異を計量化して提示したわけではなく、彼の主観で無理に「良い政治」を行っている国をイデオロギーの差異が小さいとしているのはほぼ間違い無いだろう。後に彼は分極的多党制でありながら、良い政治を行っている国としてフィンランドを認めている。[独自研究?]

色々な批判を受けながらも、この分類法は、21世紀初めの現在に至るまで、もっとも大きな影響力を持つものとして政治学者の間で広く受け入れられている。

 

1 図書資料 現代政党学-政党システム論の分析枠組み- ジョヴァンニ・サルトーリ/著 岡沢憲芙/訳 川野秀之/訳 早稲田大学出版部 2000
2 図書資料 比較政治学-構造・動機・結果- ジョヴァンニ・サルトーリ/著 岡沢憲芙/監訳 工藤裕子/訳 早稲田大学出版部 2000