大衆的貧困の概念--連帯の哲学(009)


□新しい概念
 この概念は新しいものである。トクヴィルは裕福な社会のうちにある大衆の貧困に注目した。その原因は、「産業化の下で、人々の欲求が必要を超えて先導されたことにある」(田中拓道『貧困と共和国』前掲書、75ページ)。


 ヴィルヌーヴ・バルジュモンはこれをまったく新しい現象と捉えた。個人的な貧困は、身体的、能力的な不平等や、個人の悪徳などで生まれるものである。それには慈善と貧困者への労働の強制で対処できる。しかし大衆的に貧困は個人の問題ではなく、社会構造によって引き起こされたシステムの問題だという。これは階級的な問題になったのである。

 ビュレは、「大衆的な貧困は、社会惨禍とての貧困、公的貧窮のことである」と指摘する。こうして「大衆的な貧困」への認識は、「社会」秩序一般への問いに向かう(76)のである。