社会問題の登場--連帯の哲学(010)

■社会問題の登場
□一八三〇年代の特徴
 この時代は、急速な都市化や産業化による都市貧困層の出現によって、「社会」の具体的、「組織化」が問われた時代である(田中拓道『貧困と共和国』前掲書67ページ)。
 一)急激な人口の増加。パリ市の人口は約半世紀で五五万人から一〇五万人に増大し、住宅・衛生環境の悪化、疫病の流行、犯罪の増加が発生した。
 二)七月王政期から、定期的に不況が発生するようになる。
 三)一八四〇年にはパリ市の人口の三分の一から四分の一が貧困層となる。

□ギゾーの対応
 一)一八二〇年以降、宗教に代わって歴史の概念が価値の源泉となる。「社会」とは、「文明化」へ向かって自己運動する集合として把握される(同、68ページ)。彼は王政復古期の課題を「個々人の多様性と統一を同時に実現する体制、すなわち市民的平等と自由を保障する立憲主義体制の確立にあるとした」(69)。
 二)彼は人民主権論を批判し、理性主権論を唱える。「権力は社会を構成しない、それを見出だすのだ」。「政府の本質は、社会を支配する資格のある真理を発見し、それを人々に理解させ、みずから進んで採用させる」(同)。
 三)統治権力は、社会から独立して存在するのではなく、代表や行政を通じて社会と不断に交流することによって初めて機能する。

□文献
-ルイ・シュヴァリエ『労働階級と危険な階級』(みすず書房

トクヴィル『フランス二月革命の日々』(岩波文庫

商品の詳細
-ギゾー『ヨーロッパ文明史』

商品の詳細ヨーロッパ文明史 - ローマ帝国の崩壊よりフランス革命にいたる (新装版) ギゾー,フランソワ【著】〈Guizot,Francois‐Pierre‐Guillaume〉/安士 正夫【訳】価格 ¥3,888(本体¥3,600)みすず書房(2014/09発売)