社会問題についての研究--連帯の哲学(012)

■社会問題についての研究
□ドンズロ(Jacque Donzelot)
 キリスト教政治経済学は、富裕層と貧困層の伝統的な支配服従関係を維持し、慈善の拡張によって貧困問題に対応すべきだと考えた。
 社会経済学は、貯蓄・衛生などにかかわる新しい「モラル」を貧民に内面化させることを目的とし、抑圧や服従の強制ではなく、教育や助言を通じた貧民への働きかけを重視した。
-ドンズロ『家族に介入する社会』(新曜社

内容説明

捨て子・貧民の救済に源を発し、近代家族に介入・規制する複雑な回路を発達させた国家の管理装置。子どもの裁判・社会事業精神分析などの〈保護複合体〉の諸制度が、自由・平等・博愛の下に不気味に増殖し、まなざしの罠を仕掛ける。

目次

子どもの健康管理
家族による管理
保護複合体
イメージの規制
あとがき 社会的なものの上昇

 

 


□プロカッチ (Giovanna Procacci)
 この時期の社会経済学は、貧民に扶助の権利を承認する代わりに、衛生・医学・貯蓄・労働などにかかわるモラルを内面化させる具体的なテクノロジーを探求した。「社会的なもの」の概念は、「自由主義理論の基盤を修正しようとしたものではなく、自由主義の内部で社会組織化に向けた解決策を構成したもの」(田中拓道『貧困と共和国』前掲書84ページ)。
-Giovanna Procacci, Gouverner la misere, Seuil

エヴァルド
 一八〇四年民法に表現された自由主義(個人の過失責任)原理の変容に注目した。一九世紀末の社会権の理念は、「新しい政治的合理性」「新しい存在論的状況」をもたらした。
 病気や事故は社会に内在するリスクの偶発であり、個人ではなく、社会こそがそれへの補償責任を担うという「社会権」の理念が生まれた(89ページ)。
-Eward, L'Etat providence, p.10.