公論の登場--連帯の哲学(002)
この連載では、田中拓道『貧困と共和国』を手掛かりに、連帯の哲学について考察してゆく。
■公論の登場
-ルソー。ルソーは「われわれの生きる時代を他の時代と区別する特徴は、公論(opinion public)が二〇年来もたらした方法的精神と、その帰結である」と語っている(『ルソー、ジャン・ジャックを裁く』(『ルソー全集』第三巻、白水社、三二五ページ)。
-公論と意見の概念の結び付き。この結びつきは一八世紀の後半に生じた。
-一七五〇年代から一七八〇年代にかけて高等法院は王権と対立した。対立の理由はジャンセニストにたいする秘蹟の拒否、穀物取引の自由化、租税改革などにあった。王権は、高等法院の権限を縮小し、君主の権限を強化して、租税改革を進めようとした。これにたいして高等法院はパリの民衆の支持を背景に抵抗し、みずからの権威の根拠として「人民の声」「公論」をあげるようになる。
-こうして公論は、どちらの権力にも属さず、その対立を調停する「至上の法廷」(マルゼルブ)としての意味を獲得する(p.31)
□文献
-ケイス・ベーカー『フランス革命の発明』(Keith Michael Baker, Inventing the French Revolution, Cambridge Universtity Press, 1990, p.187f.
-ロジェ・シャルティエ『フランス革命の文化的起源』松浦義弘訳、岩波書店、一九九五年、四五ページ以下。
フランス革命の文化的起源 岩波モダンクラシックス ロジェ・シャルティエ/松浦義弘 岩波書店(1999/11発売)