ジュディス・バトラー
ジュディス・バトラー
生誕 | 1956年2月24日(60歳) アメリカ合衆国・オハイオ州クリーブランド |
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時代 | 20世紀の哲学 21世紀の哲学 |
地域 | 西洋哲学 アメリカ合衆国の哲学 |
学派 | 大陸哲学 第三波フェミニズム ポスト構造主義 |
研究分野 | フェミニズム、ジェンダー、人間の性、クィア理論 政治哲学 倫理学 精神分析学 ディスクール ユダヤ哲学 |
主な概念 | 社会構築主義としてのジェンダー Gender performativity |
ジュディス・バトラー(Judith P. Butler、1956年2月24日 - )は、アメリカ合衆国の哲学者、ジェンダー理論家である。政治哲学、倫理学、フェミニズムやクィア理論の領域にかかわる研究を行っている。現在、カリフォルニア大学バークレー校修辞学・比較文学科教授。
人物・来歴
1956年、オハイオ州クリーブランドに生まれる。ヘーゲル研究の道を進み、1984年にイェール大学で博士号を取得。同博士論文は1987年に、『欲望の主体――20世紀フランスのヘーゲル哲学的省察(Subjects of Desire: Hegelian Reflections in Twentieth-Century France)』として出版された。
1980年後期から西洋フェミニズム理論のポスト構造主義的再定式化の流れに加わり、従来のフェミニズムで用いられてきた言葉の規定性、硬直性を問題にして、そのパフォーマティブな構築性に注目し始めるようになる(パフォーマティビティ論)。
レズビアンであることを公言しており、2006年1月に来日した際には、講演会場はさながらレズビアン・コミュニティーの祭りと化した[1]。ユダヤ教改革派の熱心な信者でもあり、ユダヤ系の出自であることを強く意識しており、近年の研究では、ユダヤ哲学に関心を持っている。
思想
同性愛者であることを自ら公言するジュディス・バトラーは、クイア理論などを用いて、「異性愛は人為的につくりだされたものだ」と主張する。その論拠は同じく同性愛者であるところのフーコーに依拠しながら、性の体制が男女という「二項対立」で構成されていることを「抑圧」だと考えている[2]。
『ジェンダー・トラブル』
同じく同性愛者であるミシェル・フーコーによって先鞭をつけられたジェンダーとセクシュアリティ研究を大胆に推し進め、バトラーの理論家としての地位を確立した書物である。
バトラーはジェンダーを文化的に規定された構築物だととらえ、生物学的な性(セックス) とは区別されるものと考える。さらに生物学的な性の概念も、文化的なジェンダーの規範によって重層的に規定されたものであり、文化的なジェンダーによって 汚染されていない純粋な性というものはありえないと主張する。すなわち、生物学的な定義だとみなされている性の区別は、文化的なジェンダーのパフォーマン スによって構築されるものだとバトラーは述べる。それゆえ、性的な規範は文化のレヴェルでなされる撹乱行為(サブヴァージョン)によって変化することが可 能なものだとされる。
バトラーの以上のような主張は、女性に生得的で固有な権利を確立しようとしてきた旧来のフェミニズムに 再考を迫るものであった。バトラーによれば、性差は文化的に構築されるものであって、けっして生物学的に規定されるものではないからである。代わりにバト ラーが提案するのは、多様なジェンダー・パフォーマンスによって男/女という抑圧的な二項対立そのものを脱構築していくという、撹乱的な性的実践である。
著作
単著
- Subjects of Desire: Hegelian Reflections in Twentieth-Century France, (Columbia University Press, 1987).
- Gender Trouble: Feminism and the Subversion of Identity, (Routledge, 1990).
- Bodies that Matter: On the Discursive Limits of "Sex", (Routledge, 1993).
- Excitable Speech: A Politics of the Performative, (Routledge, 1997).
- The Psychic Life of Power: Theories in Subjection, (Stanford University Press, 1997).
- Antigone's Claim: Kinship between Life & Death, (Columbia University Press, 2000).
- Giving an Account of Oneself: A Critique of Ethical Violence, (Koninklijke Van Gorcum, 2003).
- Precarious Life: the Powers of Mourning and Violence, (Verso, 2004).
- Undoing Gender, (Routledge, 2004).
- Giving An Account of Oneself, (Fordham University Press, 2005).
- Frames of war: when is life grievable?, Verso, 2009.
共著
- Contingency, Hegemony, Universality: Contemporary Dialogues on the Left, with Ernesto Laclau and Slavoj Zizek, (Verso, 2000).
- エルネスト・ラクラウ、ジュディス・バトラー、スラヴォイ・ジジェク/竹村和子、村山敏勝訳『偶発性・ヘゲモニー・普遍性――新しい対抗政治への対話』(青土社、2002年)
- Who Sings the Nation-State?: Language, Politics, Belonging, with Gayatri Spivak, (Seagull Books, 2007).
共編著
- Feminists Theorize the Political, co-edited with Joan W. Scott, (Routledge, 1992).
- What's Left of Theory?: New Work on the Politics of Literary Theory, co-edited with John Guillory and Kendall Thomas, (Routledge, 2000).
関連項目
脚注
参考文献
- 現代思想 2006年 10月臨時増刊 ジュディス・バトラー
単行本
権力の心的な生―主体化=服従化に関する諸理論 (暴力論叢書)
2012/6単行本
触発する言葉――言語・権力・行為体 (岩波人文書セレクション)
2015/10/16単行本(ソフトカバー)
単行本
自分自身を説明すること―倫理的暴力の批判 (暴力論叢書 3)
2008/8/6単行本
戦争の枠組み―生はいつ嘆きうるものであるのか
2012/3単行本
生のあやうさ―哀悼と暴力の政治学
2007/7/31単行本
アンティゴネーの主張―問い直される親族関係
2002/12単行本