「社会民主党綱領草案と解説」--レーニンを読む(007)


■「社会民主党綱領草案と解説」(009)--大月版全集第二巻(p.77-103)
 レーニンは、1895年12月8日に、ペテルブルクの「闘争同盟」での活動で他の同志たちとともに逮捕され、「国事犯」として起訴された。1895年から1896年の冬にかけて投獄され、獄中でこの綱領を執筆した。パンでインク壺を作り、レモン汁か牛乳を入れて、それをインク代わりにして執筆した。看守がやってくる音がすると、インク壺を食べて証拠をなくしたという。獄外では火にあぶって、レーニンの文章を読んだのである。


 この綱領でレーニンは、ロシア社会民主党の使命を次のように要約した。
一)「労働者の階級的自覚を発達させ、彼らの組織化に助力し、闘争の任務と目標を指示することによって、ロシアの労働者階級のこの闘争を援助することを、自分の任務として宣言する」(78)。
二)自己解放のためのロシアの労働者階級の闘争は政治闘争であって、その第一の任務は政治的自由を獲得することである。
三)党は労働運動から分離することなしに、次のようなあらゆる社会運動を支援する。
 a)専制政治の無制限の権力に反対する。
 b)特権的な地主既存の階級に反対する。
 c)競争の自由を拘束する農奴制と身分制のすべての残存物に反対する。
 これは他の政治的な組織との共同戦線を組むことを示唆している。
四)反対に、資本主義の発展と労働者階級の発展を阻止しようとするあらゆる志向に反対する。レーニンは資本主義の発展を推進することを目指すのであり、ナロードニキ主義に明確に対立する。
五)労働者の解放は、労働者自身の事業でなければならない。
六)「ロシアの人民にとって必要なのは、無制限の政府とその管理からの援助ではなく、その政府の圧政からの解放である」(79)。


 レーニンはロシアの資本主義の発展によって、大規模な工場生産が発達し、巨大な富が少数の資本家のもとに蓄積され、「人民大衆は乞食に変えられている」(84)ことを指摘する。生産が集約されたために、機械化が進展し、これによって生産力が向上した。さらに失業者が増大し、労働者の賃金が抑えられた。労働者はこれに対抗するためには団結しなければならない。こうしてプロレタリアートとなった労働者は、個々の工場で闘うのではなく、全資本家と闘うことを強いられる。「工場主にたいする労働者の闘争は、階級闘争に転化する」(86)のである。


 ただし資本家階級との闘争は、国家との闘争になる。資本家たちは政府の支援を得ているからである。資本による労働の搾取を終わらせるために、すべての生産手段を「労働者自身によって舵を取られる共同の社会主義的生産」(90)に移行する必要がある。そのためには政治権力を奪取する必要があり、そのためにも党の指導が必要となるのである。

■「ツァーリ政府に与う」(010)--大月版全集第二巻(p.104-109)
 1896年に「労働者階級解放闘争同盟」の名で発表されたこの文章は、レーニンが獄中で執筆したものであり、労働者の大衆闘争によって、政府は労働者が工場主と闘っていることを公式的に認めざるをえなくなったことを指摘する。そして立ち上がった平和な労働者にたいして、「警察と軍隊、憲兵と検事を従えた国家権力が、総力をあげて襲いかかった」(108)ことを非難した。
 ツアーリ政府は労働者にたいする勝利を祝っている。しかしこれによって「労働者たちは、工場主に援助を約束した政府が、誰の利益を守っているかを、見てとった」(109)のである。